自動ドア(じどうどあ)
自動ドアとは自動的に開閉する仕組みの扉のことを言い、コンビニエンスストアや店舗、集合住宅など幅広い場所に設置されています。衛生管理が大切とされる食品工場や病院のほか、駅のプラットホームでも見かける身近な存在です。わずかな電力で動き、ドアの閉め忘れを防げる自動ドアは、節電効果につながります。全国自動ドア協会の調査によると1日8時間で扉を1,000回開閉した場合、1ヶ月の電気代は100円以下という結果がでています。自動ドアは、利便性の高さだけでなくバリアフリー効果も期待できます。ベビーカーを押して歩く人や車椅子の利用者など、重い扉を開け閉めするのが大変な人に欠かせない存在です。
紀元前には、エジプトの科学者ヘロンが神殿のドアを蒸気で開閉したという記録があり、これが世界最古の自動ドアと言われています。日本国内では1950年代後半を境に、建物用自動ドアの普及がはじまりました。1964年には東京オリンピックで建築ブームが到来し、エアコンの普及が増加したことで一般店舗にも広く浸透したとされています。現在、自動ドアの普及率は日本が世界一を誇っており、国内では推定200万台以上の自動ドアが稼働しています。
自動ドアは「センサー」や「制御装置」「モーター」「ベルト」など、さまざまな部品が組み合わさり稼働しています。通行人を感知したセンサーが信号を制御装置に送り、モーターがベルトを動かしドアが開く仕組みです。自動ドア上部の両面には起動センサーがついており、センサーの感知が止まって一定時間がたつとドアが閉まります。ドアには検出範囲を補うための補助センサーがついており、安全性を高めています。自動ドアが普及した当初は、人の重みを感知してドアが開く「マットスイッチ式」を採用した自動ドアが多く使用されていました。しかし感知にムラが出やすいため昨今ではほとんど使われておらず、現代は「光線式」のセンサーで動く自動ドアが多くを占めています。光の反射量で人を感知する「光線式」は、気温の変化で感知精度が鈍る「熱線式」、雨風に弱い「超音波式」のデメリットを補う高精度のセンサーと言われています。
国内にある自動ドアの種類は主に引き戸タイプとなっています。引き戸はドアが1枚の「片引き戸」、2枚のドアを左右に開く「両引き戸」、2枚のドアをあわせて片方に開く「二重引き戸」の3種類にわかれています。両引き戸は間口が広く、大きな荷物の搬入がスムーズなため、大型商業施設やマンションなどで採用されるタイプです。1枚あたりのドア面積が小さい二重引き戸の自動ドアは開口部の幅がドア全体の1.3倍ほど広く、車椅子の利用者などが通行するのに適しています。
引き戸以外の自動ドアには「折り戸」や「円形戸」「回転ドア」「開き戸」があります。折り戸は浴室ドアのような折りたたみ式、円形戸はカーブがついたデザイン性の高い自動ドアです。回転ドアは外の風が室内に入りにくく、室温を快適に保てるという特徴を持ちます。1960年代以前の日本で主に使われていた開き戸は、ドア付近での事故やトラブルなどが多発したため現在ではほとんど使用されていません。また日本には古くから障子を用いた引き戸文化が存在していた影響もあり、西洋の開き戸から引き戸へ変化したとされています。
コンビニエンスストアや大型商業施設でよく見かけるガラス製のドアの鍵は、「シリンダー錠」と呼ばれるタイプの鍵です。自動ドアの物理鍵と言うとシリンダー錠が代表的で、自動ドアの下部には通常の扉と同様に鍵穴がついています。シリンダー錠は「ピンシリンダー」や「ディスクシリンダー」と呼ばれるギザギザ状の鍵と、鍵に模様のような穴が見られる「ディンプルキー」にわかれています。ディンプルキーは複製の難しさから防犯性能が高いとされる鍵で、多くの商業施設の出入り口や住宅の玄関などに採用されている鍵です。
古い機種の自動ドアには、18世紀に発明された「レバータンブラー錠」と呼ばれる形状の鍵を使っている場合もあります。しかしレバータンブラー錠は、シリンダー錠と比較すると単純な構造をした鍵のため、防犯性は低いと言われています。そのため近年はセキュリティ面の不安から、鍵交換をきっかけに防犯性能の高いシリンダー錠に変更する人も増加しています。
電気錠と組み合わせて運用すると、自動ドアの鍵のセキュリティはより強固になります。リモコンやカード、暗証番号などの電気錠の鍵を使えば、自動ドアの防犯を高めることが可能です。たとえば暗証番号を利用した「テンキー錠」は、鍵の持ち歩きが不要な利便性に加え、鍵穴がないことでピッキングを防ぐ効果が期待できる鍵です。オートロック機能を持つ電気錠と組み合わせることで、認証手段を持たない部外者の侵入を防げるようになります。入館制限機能をつけたカードキーと自動ドアを同時に使うと、一定の人以外の入館を自動で制限することも可能です。
一般的な自動ドアは電気で動くタイプが多いため、停電時の動作をあらかじめ確認しておくと安心です。多くの自動ドアは災害時や緊急時など突然電源が切れた際に、手動でドアを開け閉めできるよう、設定が自動で切り替わるタイプになっています。ただし鍵の防犯性能は低下するため、機密情報を保管するオフィスやサーバールームへ設置する場合は、緊急時の対応を確認しておくなど注意が必要です。