建て付け調整(たてつけちょうせい)
1日に何度も開け閉めをする扉は、建て付けが悪くなると地面とこすれたりドア枠に接触したりするほか、鍵にも影響を与えることがあります。鍵はカンヌキの役割をするデッドボルトがストライクという受け部に収まることで固定されて施錠されますが、建て付けが悪いとデッドボルトとストライクの位置がずれる場合があります。
建て付けが悪い扉に多いケースがドアとドア枠を固定する蝶番(ちょうつがい)の劣化や故障です。蝶番は重い扉を支えているため、経年劣化によって固定ネジが緩んだり曲がってしまい、開閉しにくくなることがあります。蝶番が劣化すると、扉がドア枠に当たったり床を引きずる不具合を引き起こす場合があります。玄関扉で発生するトラブルの原因には、経年劣化によるドア枠下部の沓摺(くつずり)の膨張や錆びがあげられます。木造住宅で扉の上下に隙間ができる建て付けトラブルには、温度や湿度の変化で乾燥や膨張を繰り返す木材の特性が関係しています。そのほか地盤との荷重バランスが崩れることで建物が不均一に沈む不同沈下が、建て付けの悪さにつながるケースもあります。
引き戸で扉の重さや引っ掛かりを感じる建て付けの悪さには、レールを固定するビスの緩みやはずれが考えられます。また経年劣化により扉下部に収められている戸車(とぐるま)がすり減ると扉の位置が徐々に下がるため、扉の上下に隙間が発生する不具合につながります。折れ戸が隣接する扉や壁にぶつかる建て付けトラブルの原因には、経年劣化でレールや戸車のネジが緩んで扉が本来の取り付け位置からずれてしまったケースが考えられます。
扉は蝶番のゆるみが原因で建て付けが悪化するケースが多いため、蝶番を締めなおすことで建て付けが改善する場合があります。建て付け調整時は開き戸や引き戸、折り戸などの種類にかかわらず、ネジ穴の破損を防ぐため電動ドライバーを使わないように注意します。3次元調整蝶番と呼ばれる蝶番は、調整ネジを回し扉の建て付け位置を上下・左右・前後へ動かすことが可能です。プラスドライバーで固定ネジを緩めてから、不具合の症状に応じて調整ネジで扉を動かします。ストライクの建て付け調整ではプラスドライバーを使って、扉側面にあるドア枠とストライクを固定するネジを緩めます。扉を開閉しながらデッドボルトがストライクにはまる位置を確認できたらネジを締めなおします。
引き戸の建て付け調整箇所は、レールと戸車の2つです。床にレールを埋め込んでいるタイプの引き戸は、レールを固定するビスの緩みをプラスドライバーで締めなおします。上吊りタイプの引き戸では扉を取り外し、上のレールにも建て付けの悪さにつながる原因がないかを確認します。扉の高さが原因で建て付けが悪い場合は、プラスドライバーで扉下部にある戸車の高さを調整します。調整機能付きの戸車では、扉側面にある調整ネジを緩めたり締めたりすることで高さ調整が可能です。ただし戸車の寿命は3年から4年程度と言われているため、車輪部分が大きくすり減っていたり車輪の軸が破損している戸車は交換が必要です。また折り戸の扉が左右に歪んでいる際は、プラスドライバーや六角レンチを使用してドア下部の床に埋め込まれているネジを操作し、左右の建て付け位置の調整を行います。扉の位置を高くしたい場合は扉上部に収められている吊り車のビスをドライバーで右に、扉の位置を低くしたい場合は左に締めます。
建て付け調整の際は扉の動作確認をあわせて行いますが、扉を勢いよく開閉したりネジを回しすぎると扉や部品が破損し、不具合が広がる場合があります。DIYは指を挟んだり、倒れてきた扉の下敷きになったりする危険もあるため、建て付け調整は無理せず業者に依頼すると安心です。扉の専門業者に依頼すると、扉を仮置きするマットの用意や室内の養生をして建て付け調整をしてくれるため、床や壁を傷つける心配が軽減されます。扉の建て付けの悪さには、いくつもの原因が関係している可能性もありますが、個人でトラブルの原因を全て把握するのは困難です。業者に依頼すると建て付けが悪い原因をより正確に特定してもらえるため、再発リスクを減らすことができます。
とくに扉の専門業者に依頼したほうが安心な建て付け調整には、ドア枠や扉本体の歪みがあげられます。古い住宅では、扉自体の劣化が進んでいるケースもあるため、部品が壊れたり扉のずれが大きくなるとネジ締めや交換だけで対応できなくなる場合があります。調整機能がついていない蝶番が使われている扉も、個人での建て付け調整が難しいため業者に依頼するとスムーズです。床に対してドア枠が垂直でない場合は建物自体の傾きが疑われるため、より大がかりな調査が必要になる場合も考えられます。建物の歪みは食欲不振や不眠、めまいや頭痛など健康に悪影響を及ぼす場合があるため、速やかに扉の専門業者に調査を依頼し適切な対処法を相談することが大切です。扉の上下にある隙間が大きい場合も、建物自体の歪みが原因で建て付けトラブルが起こっている可能性があるため、調査をしてもらうと安心です。