コンストラクションキーシステム(こんすとらくしょんきーしすてむ)
建設や工事を意味するconstruction(コンストラクション)の単語からもわかるように、コンストラクションキーシステムはリフォームや新築といった工事現場で活用されている手法です。建設現場を円滑に管理するため、施主と業者が共通の鍵で扉の解錠や施錠をします。通常、鍵を外部の人間と共有すればするほど、合鍵を作られたり紛失されたりしてしまうリスクは高まります。しかし入居後に使用する鍵を鍵穴に差し込むと、内部構造の変化でコンストラクションキーシステムの仕組みは無効になり、最終的に入居者の持つ鍵以外で扉は解錠できなくなります。多くのコンストラクションキーは1度でも入居用の鍵を使うと、錠のなかの構造が変化しコンストラクションキーシステムが再び使用できないような構造に工夫されています。コンストラクションキーシステムを取り扱う際は、構造を正しく理解し慎重に操作する必要があると言えます。
施工業者と入居者の双方にメリットがある点がコンストラクションキーシステムの特徴です。例えば、現場のスムーズな作業には、コンストラクションキーシステムは欠かせません。コンストラクションキーシステムが導入された現場では、業者は工事期間中に好きなタイミングで出入りができるため作業が円滑に進みます。建物が完成し引き渡される際に入居者の不安を減らす効果がある点も、コンストラクションキーシステムの優れた点です。防犯上、建物は仕上がりまでの期間も外部から関係者以外の人を入れないよう窓や扉を施錠しておく必要があります。リフォームや新築の現場には日々、多くの作業員の出入りが発生します。作業が完全に終了するまでのあいだ、物件の戸締まりに取り入れるコンストラクションキーシステムは、建物を不正侵入から守るのに役立ちます。コンストラクションキーシステムはいざというときのトラブルにも力を発揮します。仮にコンストラクションキーシステムを取り入れずに工事を進め、関係者に合鍵を作られてしまうと、錠前ごと交換しない限り入居後の侵入リスクは高い状態のままと言えます。コンストラクションキーシステムは、工事終了後の簡単な操作で玄関錠の内部構造を変更できます。そのため住みはじめてから安全のために新たな錠前に交換する作業が不要です。
一定の期間が経過したあとに工事用の鍵が使えなくなる理由は、玄関錠の内部構造とコンストラクションキー自体の構造の2つに工夫があるためです。通常、錠は内部にタンブラーと呼ばれる障害物を持った構造をしており、施錠時は二重構造の筒の内側が鍵とともに回転しないよう邪魔しています。正しい鍵を差し込むと、タンブラーが整列する効果で内筒が回転し解錠される構造です。コンストラクションキーシステムのために用意される専用鍵の構造は、通常より長さが少し短めに作製されています。工事の期間中は、コンストラクションキーの長さに合うよう、錠内部の奥にあらかじめボールを埋め込んでおきます。埋め込まれたボールの効果で、鍵が回る錠内部のスペースは通常より狭い構造に変化します。工事が終了しコンストラクションキーシステムの利用を終了する際は、入居後に使う鍵を差し込み回します。鍵の先がボールに接触するとボールは錠内の所定の位置に落ちる構造です。ボールの落下はあらかじめ狭くしていた錠の内部構造のスペースを広くします。このようにコンストラクションキーシステムの鍵が回せなくなるのは内部と鍵の形状にかみ合わなくなるためです。
大手鍵メーカーのGOALが独自に備えるのがダブルコンストラクションキーシステムと呼ばれる、コンストラクションキーシステムの仕組みをさらに進化させた手法です。通常のコンストラクションキーシステムでは、鍵を抜き差しするタイミングは工事終了後の1回のみです。ですがダブルコンストラクションキーシステムでは実際に完成した建物に住むまでのあいだ、工事の際とは異なるコンストラクションキーを用いて、入居者自身が建物を管理します。まず工事専用のコンストラクションキーは物件管理用のコンストラクションキーの操作で無効化されます。つぎに入居用の鍵を差して回すと、物件管理用のコンストラクションキーは使えなくなります。ダブルコンストラクションキーシステムは工事後から入居まであいだが空いてしまうケースに、安心感を高めるコンストラクションキーシステムの種類と言えます。
コンストラクションキーシステムのデメリットは、対応していない錠前も存在する点です。リフォームの現場でコンストラクションキーシステムを活用するには、あらかじめ自宅の扉が対応できる構造なのかを調べておく必要があります。玄関錠がコンストラクションキーシステムに対応していないタイプである場合は、必要に応じて錠前自体の交換や補助錠の設置を検討してください。錠前自体の交換が難しい場合は、鍵の取り扱いについて事前に業者と話し合い、取り決め内容を書面に記しておくと安心して施工業者に作業を任せられます。