円筒錠（えんとうじょう）

円筒錠とはドアに設置する鍵のことで、ドアノブの中心にシリンダー錠が組み込まれた「キー・イン・ノブ」タイプでもあります。「モノロック」や「シリンドカルロック」とも呼ばれています。アメリカで発明された円筒錠は、比較的安価でドアの室内側と室外側に穴を開けるだけで簡単に鍵の取り付けが可能です。日本では、住宅の供給が激増した昭和30年代の高度経済成長期に円筒錠は普及しました。住宅の需要が大幅に増え、それまで一般的だった引き戸から、西洋風の鍵や開き戸へと移行するなか、手軽に取り付けられる円筒錠が適していたのです。以降、現在までさまざまなドアの鍵として利用されています。

ドアを施錠する役割のデッドボルトがなく、仮止め的な役割のラッチボルトだけを備えた円筒錠は簡易的な構造のため不正解錠されやすいといえます。そのため円筒錠は玄関ドアや勝手口・重要な書類を保存しているオフィスの書庫など、高い防犯性が求められるドアの鍵には向きません。シンプルな構造のためDIYなどで誰にでも取り付けやすく、トイレや洗面所・オフィスの間仕切りのドアなど、円筒錠は主に室内のドアノブに鍵を付けたい場所で利用されています。ドアノブタイプの鍵の「チューブラ錠」や「インテグラル錠」と円筒錠は見た目が似ています。ほかの鍵との見分け方は、室内側ドアノブにプッシュボタンがついていること・ドアノブの付け根や台座に小さな穴が空いていること・デッドボルトがないことです。

円筒錠は、室外側のドアノブと円筒状の錠本体・プッシュボタンまでが一列に並んだ構造で、室内側のドアノブと台座・ラッチボルトが分離できるようになっています。ドアノブとラッチボルトが連携しているので、室外側からは鍵でドアノブを固定して施錠します。鍵を閉めると室外側のドアノブが動かないのでドアを開けられません。反対に鍵を入れてドアノブが回ると、ラッチボルトが錠本体側に動いて引っ込み解錠します。室内側からはドアノブの中央部のプッシュボタンを押して室外側のノブが回転しないように固定して施錠し、ドアノブを回すと常に解錠できます。ラッチボルトのみでドアを固定している円筒錠は、ドアノブを回すことができれば解錠可能で防犯性が低いのが特徴です。近年のラッチボルトの役割は、風などでドアが不用意に開かないよう、簡易的に固定するための意味合いが強くなっています。デッドボルトで施錠していないので、円筒錠は激しくドアノブを動かしたりドアに強い衝撃を与えたりすると解錠することがあります。ピッキングやバールなどの攻撃にも弱く、状態によってはドアとラッチ受けのすき間に板状のものを差し込んで動かすだけで解錠することもあるほどです。これらの方法であれば、円筒錠は数秒から数分で不正解錠される恐れがあります。円筒錠は、新築の建物の玄関ドアや勝手口の鍵に使用されることはほとんどありませんが、古いアパートや一戸建てでは外から家の中への出入り用のドアの鍵として使われていることがあります。防犯性を上げるには円筒錠の交換や補助錠を取り付けるなどの対策が必要です。ホテルの客室のドアに設置している円筒錠は自動施錠機能があるため、ドアノブを回せず不正解錠がしづらくなっています。基本的には正規の鍵かマスターキーでしか解錠できません。交換する円筒錠に自動施錠機能つきのものを選ぶのもひとつの方法です。

円筒錠を交換する際には、ドアの厚さやバックセット（ドアノブの中心からドアの端までの長さ）・フロントプレート（ドア側面の金属の板）の長さや幅・ビスピッチ（フロントプレートを固定している2つの小ネジの距離）を必ず計ります。これらのサイズを間違うとドアに取り付けができず、逆に使用中の円筒錠とは違うメーカーや型番のものでもサイズが同じなら取り付けることが可能です。円筒錠の交換の際に必要な道具は、プラスドライバー・マイナスドライバー・キリの3つです。室内側のドアノブの付け根の小さな穴にキリを差し込むとドアノブが外れます。ドアノブの台座にマイナスドライバーを差し込んで、梃子（てこ）の原理で外します。交換する円筒錠もドライバーを使えば取り付けができます。円筒状は、MIWA・GOAL・SHOWA・FUKIなど鍵の専門メーカーから選ぶと機能性や耐久性でも優れています。GOAL（ゴール）社のユニロック（円筒錠）「ULWシリーズ」は操作性が良く、自動施錠機能があって耐久性が高く、価格も安価です。同じくGOAL社の「USシリーズ」は米国UL規格に認定されており、防火強度と耐久性に優れています。FUKI（フキ）社の「iNAHO TLH ユニバーサルレバー円筒錠 69」のように各社の円筒錠と交換可能なレバーハンドル型の円筒錠も開発されています。レバーハンドルは小さな子どもや高齢者などドアノブを回す力が弱い方にも使いやす形状です。円筒錠はドアの厚さやバックセットなど現在使用中の鍵と同じものを選ぶ必要があります。作業に慣れていないとドアを傷つけることがあるので、円筒錠の鍵交換は専門の業者に任せると安心です。