ドアスコープ(どあすこーぷ)
ドアスコープとは、玄関扉にある円形の小型レンズで、ドアアイとも呼ばれる防犯設備です。マンションやアパートといった集合住宅に備わっているケースが多く、扉を開けずに室内から外の人を確認できるのが特徴です。近年では、モニター付きインターホンが玄関の防犯設備として重視される傾向にあるため、ドアスコープを装備しない物件が増えています。
防犯への施策が何もなされていないドアスコープの場合、レンズの特性や設置場所を悪用した犯罪の被害に遭う可能性があります。例えば、リバースドアスコープとスマートフォンを組み合わせ、室内をのぞいたり撮影したりする事例が発生しています。リバースドアスコープは、長期間家を空けていた際などに、室内に空き巣や不審者がいないかを確認する防犯グッズです。通常のドアスコープは、光の屈折を利用するレンズの仕組みによって、外から室内の様子がはっきりと見えません。しかし、似た構造のレンズを逆さにしてドアスコープに重ねると、光の屈折が相殺されます。光の屈折が打ち消された結果、内側からしか見えないという本来の特性がリセットされ室内が丸見えになってしまいます。特にワンルームは、廊下を通してレンズの延長線上に部屋があるため、狙われやすいと言えます。1Kの住宅に多い廊下の両側に風呂場やキッチンがある間取りの場合も、廊下を盗撮される危険性があるため防犯強化が必須です。ほかには、サムターン回しへの防犯強化が必要です。ドライバーやペンチを使って外したドアスコープの穴に細長い工具を差し込むと、室内側のつまみ部分であるサムターンを回転し、不正解錠が可能になります。扉に元からあるドアスコープの穴を悪用するため、大きな音が出ない手口です。特に、経年劣化でドアスコープのネジが緩んでいる場合、手早く外されてしまう恐れがあるため防犯強化が推奨されます。
のぞき見対策には、ドアスコープにカバーをつける方法が有効です。数百円から購入できる製品が多く、両面テープで貼り付けるタイプやマグネットタイプがあります。鉄製の玄関扉であれば、マグネットタイプを用いて扉を傷つけることなく設置できます。ドアスコープカバーは、室内の灯りが外に漏れないようにする効果もある防犯グッズです。通常、空き巣は侵入前に住人の生活パターンや在宅時間を把握しようとします。したがって室内から漏れる灯りをシャットアウトすると、プライバシーを守り防犯につながります。しかし、ドアスコープ自体を外側から外されるリスクは残るため、サムターン回しへの防犯としては不十分と言えます。サムターン回し対策には、空転式のドアスコープが有効です。通常、ネジを緩めるとドアスコープはパーツが分離し扉から外れます。しかし空転式のタイプでは、ネジ山の部分に空転機能が装備されています。外側から外そうとするとネジが空回りするため防犯性能が飛躍的に高まります。
自動録画機能や写真撮影機能を持つカメラ機能付きのドアスコープは、ドアスコープ関連の犯罪を防止するほか、玄関全体の防犯性能を高めます。カメラ機能が付与されたドアスコープは、ドアスコープ前にいる人の動きをセンサーが感知し、自動で撮影や録画を開始します。そのため、カメラ付きインターホンのように室内側扉に取り付けたモニターで来訪者を確認できます。さらにSDカードで後日記録をチェックできる製品も存在するため、いざというときの証拠になります。乾電池式のものは配線不要で、在宅を悟られにくい点がメリットです。ただし、ドアスコープを活用したカメラの場合、見た目で録画機能がついているかどうかは判断しにくいと言えます。防犯面をより強化するには、扉上部にカメラを取り付け防犯意識の高さをアピールする方法も有効です。例えば、玄関扉の上部に固定する専用のカメラをあわせて活用することで、抑止力が高まります。
防犯機能が施されたドアスコープへは、DIYで手軽に交換することができます。ただし、扉の穴に新しく取り付けるドアスコープ本体のサイズが対応していなければ使用できません。購入前は、既存のドアスコープをいったん取り外し本体や扉の穴のサイズを確認してから購入すると安心です。ドアスコープは、ドアを挟み室外側と室内側のパーツに分離しています。取り外すにはまず、室内側の溝にコインをあて反時計回りに回します。次に、落とさないよう外側に手を添えながら、室外側のパーツも取り外します。設置する際は、室外側パーツをまず外から穴にはめ込みます。次に室内から内側のパーツをはめ、時計回りに回転させます。空転式やカメラ付きのタイプに交換する際は、住宅に備わっている既存のドアスコープを取り外す必要があります。賃貸物件では、原状回復義務があるため、退去時には基本的に設備を元通りにしておく必要があります。そのため、取り外したパーツの紛失に注意するのはもちろん、交換時は必ず管理会社や大家さんに許可をとるようにしてください。