電子錠(でんしじょう)
一般的な金属製の鍵を使わず、電気の力で扉を解錠する錠のことを電子錠と言います。電池の力を使うため、別名で電池錠とも呼ばれています。電子錠の寿命は使用頻度にも左右されますが、電気錠同様約7年とされています。電池で作動するため配線工事が不要な分、設置コストの削減や工事期間の短縮を実現します。比較的低コストで防犯性能の向上が叶うことからオフィスや宿泊施設、住宅などの通用口で利用されています。近年は戸建て住宅をはじめ、通常の鍵から電子錠への切り替えを進める賃貸物件が増加しています。補助的なロックとして使用できる南京錠タイプの電子錠や、宅配ボックスに取り付け可能な電子錠も存在します。
物理的な金属製の鍵に比べてセキュリティ面を強化できるのが、電子錠の大きな特徴です。電子錠を採用した扉には、非常用シリンダーを除いて基本的に鍵穴ないためピッキングや鍵穴へのいたずら対策に効果を発揮します。電子錠の多くには、オートロック機能が備えられているため、鍵のかけ忘れを防止します。ごみ出しなどの少しの時間でも扉が閉まると即座に施錠できるため、空き巣や不審者の侵入防止につながります。電子錠を導入すると金属製の鍵は持ち歩く必要がありません。電子錠のなかには、一定の利用時間を経過すると鍵として使用できなくなる、ワンタイムパスワード機能が搭載された製品も存在します。建物のセキュリティが向上するほか、家族や友人が訪ねてくる際に合鍵を渡す手間がなくなります。電池そのものの残量がなくなっていなければ、停電時にも解錠できるのが電子錠の優れた特徴です。電子錠は配線不要の独立した構造のため、開き戸以外にも引き戸やガラス扉など、さまざまな扉に取り付けが可能となっています。
電子錠は、用途に応じた幅広い解錠方法が用意されています。解錠方法には暗証番号やリモコンキー、カードキー、スマートロック、生体認証の一種である指紋認証などの種類があります。暗証番号では、誤った数字が連続で入力されると警報音が鳴り、一定時間操作ができなくなる機能を持つ電子錠があります。暗証番号タイプの電子錠は、削除や再登録をすれば簡単に以前の番号を無効化できるため、人の入れ替わりが多い施設で使用する鍵に適しています。リモコンキーの電子錠は、扉に近づいてリモコンのボタンを操作すると扉が解錠されるタイプや、対応距離内であれば鞄やポケットに入れたままで解錠できる電子錠があります。近づいたりボタンを押したりするだけの手軽さから、空き巣対策に欠かせないワンドアツーロックの扉を負担なく運用できます。カードキーの電子錠は、鍵を紛失した際や退職者が出た際に、古いカードキーを簡単に無効化できます。管理者のみ個別でカードの追加や削除をすることも可能なため、社内のセキュリティ維持に効果を発揮します。ゲスト専用のカードが作れる製品もあるため、防犯性能を維持したまま顧客をスムーズに社内へ案内できます。スマートロックの電子錠は、主にスマートフォンなどの電子機器を鍵の代わりに使用します。スマートフォンのアプリと扉をBluetoothやWi-Fiなどの無線通信で連動させることで、離れた場所から扉の解錠を可能にします。スマートロックの電子錠を活用すると鍵代わりとなる認証番号の送信や、入退室履歴の確認といった業務効率化が可能です。生体認証の一種である指紋認証技術を用いた電子錠は、事前に登録しておいた指紋と照らし合わせる解錠方法です。指や手のひらなどをセンサーに当てた際に、登録済みの人物と判断されれば鍵を解錠する機能を持ちます。暗証番号を覚えるのが難しい場合でも手軽に利用できます。指紋は物理的な物理鍵やカードのように貸し借りが困難です。社内の人間などによる不正解錠防止にも効果を発揮すると言えます。
幅広い認証方法が備わった電子錠ですが、電池を消耗すると機能しなくなるため注意が必要です。外出中に電池が切れると、玄関の鍵を操作できずに家に入れなくなる場合があるため、残量がゼロにならないよう早めに電池交換しておく必要があります。しかし多くの電子錠には、アラーム音やランプ点灯で電池残量の低下を知らせる機能が備わっています。さらに万が一に備えて非常用の外部電源を接続する箇所が備わっている製品や、非常用の物理鍵が付属している製品も存在します。電子錠の導入時は解錠方法に加え、非常時の使用方法にも配慮すると安心です。
電子錠を後付けで設置するには、錠ケースの交換または錠前を部分的に交換する方法があります。対応している錠前であれば扉に特別な穴を開けずに、シリンダーやサムターンといった一部の部品交換のみで取り付けられます。対応していない錠前の場合は、錠ケースごと交換します。錠前や扉の仕様によって、シリンダーを交換せずに残しておくことも可能です。そのほかテープでサムターンに被せるように貼り付ける方法があります。賃貸物件で大がかりな穴開け工事ができない場合でも、貼り付けタイプの電子錠であれば手軽に導入可能です。貼り付けタイプの電子錠はDIYでの設置が可能ですが、衝撃や経年劣化で設置位置が次第にずれてくる可能性があります。設置や取り外しが容易なため、引っ越しの多い方などでも安心して導入可能と言えます。しかし設置個所を誤ったり位置がずれたりしてしまうと施解錠の動作に影響を及ぼすため、取り付けは専門業者に依頼するとスムーズです。また穴開け加工を伴わない場合でも、賃貸の玄関を許可なしに変更すると規約違反に問われる可能性があります。事前に大家さんや管理会社に相談し、許可をもらってから施工するよう注意してください。