指紋認証(しもんにんしょう)
指の腹にある隆線(隆起した部分)の違いを利用した認証方法を、指紋認証と言います。指紋は誰もが持っていますが、分岐の仕方や渦の大きさなど、パターンは人によって異なります。指紋認証は、事前に登録したおいた指をセンサー部分に当て、ロックを解除する仕組みです。指紋認証の仕組みは入国審査や大規模なイベント会場、オフィスや研究室などに利用されています。2013年には、指紋認証での鍵の解除機能を搭載したスマートフォンが発売され、一般家庭にも身近な仕組みになりました。
指紋認証のセンサーの仕組みは、大きく分けると「静電容量方式」「光学式」「超音波式」の3つです。センサーで読み取った指紋は、特徴点の抽出や周波数解析、画像比較といった仕組みで照合します。代表的なのが、特徴点を抽出する仕組みです。指紋には三角州や袋小路のような模様など、多数の特徴があります。一般的な指紋認証では、中心点からどの位置に複数の特徴点があるかをデータにし照合します。ホームボタンのついたスマートフォンなど多くの指紋認証で採用されているのが、静電容量方式のセンサーです。通常、指はわずかに汗をかいています。汗には電解質が含まれ、電気を通す仕組みを持ちます。電解質は指紋の盛り上がった箇所に多くたまります。しかし、途切れや分岐といった溝の部分にはあまり集中しません。そのため、指紋の各場所には電気量の差が生まれます。光学式認証・超音波認証は静電容量式よりも安定した認証が可能で、静脈認証・真皮認証等の高度な認証は光学式又は超音波式が用いられます。真皮認証にはKJ TECH japanのKJ-3500等が代表機種です。
指紋認証のセンサーに内蔵された何万個もの小さな電極は、各場所の電気量の差を読み取り、データ登録する仕組みです。登録データとボタンの内側にあるセンサーに指先が触れると、特徴が比較されます。本人と判断されると、指紋認証のロックが解除される仕組みです。光学式や超音波式は、ボタンではなくディスプレイに埋め込まれた指紋認証です。光学式は、液晶画面の下から指紋に光を当てます。盛り上がった箇所や、へこんでいる箇所で反射の仕方はそれぞれ異なるため、陰影が生まれます。陰影をレンズに集めると指紋が検出される仕組みです。光学式の弱点を改良した指紋認証が、超音波式と呼ばれる仕組みです。指に当てた超音波の跳ね返りの強度や角度を使うため、立体的に指紋を検出できます。超音波は皮膚のなかも通れるため、表面だけでなく指内部の血流まで検出可能です。そのため、生きた人間の指紋でない場合や、偽造された指紋での不正解除を防止できます。水分や汚れがある場合でも、正常に認識しやすい仕組みとされています。
個々の身体の特徴を利用した仕組みの指紋認証では、パスワードや鍵のように盗難されるリスクがありません。ログインの際に長く複雑なパスワードの入力が不要な点も、指紋認証の利点と言えます。通常、鍵を紛失したり引っ越したりすると鍵交換が必要です。しかし、指紋認証の錠前であれば、データの削除や再登録のみで運用できます。指紋認証の防犯性を強化するには、登録する指を定期的に別の指に変更すると効果的です。ただし、自分の指のみを指紋認証に登録していると、災害や病気により室内で倒れた際に救助が遅れるリスクがあります。万が一に備えて、指紋認証の錠前に親族など複数の人の指紋を登録しておくと安心です。指紋認証は、オフィスの防犯性と利便性向上にも効果を発揮します。カードキーのような個々での管理が不要になるため、紛失時の対応にかける時間を削減できます。入退室管理システムと指紋認証の仕組みを連動させると、入室時間の制限や入退室履歴の確認が可能です。指紋認証の錠前には、データ管理者の指紋がなければ、登録データの削除や更新ができないタイプもあります。悪意を持った人の不正操作はもちろん、操作ミスによる指紋認証のエラーを防ぐことが可能です。鍵を持ち出すごとに紙に記載する必要もなくなるため、急なトラブルで備品を持ち出す際にも利便性が向上します。
場合により手荒れや汗の影響を受けてしまうのが、指紋認証の注意点と言えます。手が湿りすぎると、通常であれば電気がたまりにくい部分にも電気量が蓄積されデータに狂いが生じるためです。一方、乾燥が著しいと電気を通す仕組みを果たす汗が減り、認証に失敗することがあります。指に怪我やひび割れがある場合も、うまく読み取れないことがあります。一般的に男性に比べて皮膚が薄いとされる女性や、成長期の子どもの指紋は反応しにくいことがあります。エラーを繰り返す場合は、違う指で試したり再登録したりする必要があります。玄関に設置する場合、ホコリや汚れ、雨水により認証しにくくなるケースがあります。読み取りがうまくいかない場合は、定期的にセンサーの状態を確認し、乾いた布などで掃除するようにしてください。
扉の仕様に適合していれば、指紋認証の錠前を既存の玄関扉に後付けすることが可能です。指紋認証の錠前は、ネットショップでの購入もできます。しかし、ネットで購入した指紋認証の錠前を業者に取り付けてもらう場合、トラブル防止の観点から設置を断られるケースがあります。指紋認証は、精密な仕組みからなるシステムです。利用者の皮膚の状態以外にも、汚れや水分などさまざまな要因で仕組みが機能しなくなる場合があります。使用環境以外にも、製品自体が不良品である可能性があります。ネットで購入した指紋認証の錠前の場合、設置の可否をあらかじめ確認して依頼すると安心です。