ピッキング(ぴっきんぐ)
不正解錠される手口のひとつでピックとテンションというピッキング工具を用い、シリンダー内のピンをそろえることで解錠を行います。空き巣を行う際に多く使われる手口で、鍵穴を壊さずにシリンダー錠に触ることができるため不正解錠の被害にあったことに気づきにくく、繰り返し侵入される事例もあります。危険な事例だとピッキングの犯行途中で家の人に見つかり強盗に変わるケースも多く報告されています。
ピッキングに使う工具は、小さいため容易に持ち運びができます。ピッキングの際に出る音は静かなのに加え、犯行に慣れている人だと短時間で解錠してしまうため、周囲の人間に気付かれにくいという特徴があります。短時間でできてしまう犯行だからこそ、そもそもピッキングされにくい環境作りが重要です。
ピッキング被害の遭いやすさは、鍵の種類によって大きく左右されます。かつて日本で普及していた一般的な鍵のひとつで「ディスクシリンダー錠」というタイプの鍵があります。ディスクシリンダー錠は、複数のディクスタンブラーで構成されています。適合する鍵を差し込むと、タンブラーが内筒と外筒の境界に収納された状態となり、内筒を回転することが可能になるので解錠されるといった仕組みです。安く手に入れることができる反面、構造がシンプルであるがゆえにピッキングの被害も多く発生しました。古い建物はディスクシリンダーが使われているため、鍵交換をしていない場合はピッキングをされやすい環境下に置かれていると言えます。ピッキングされやすい鍵として、ディスクシリンダー錠のほかには、旧式のピンシリンダー錠、インテグラル錠、円筒錠などがあげられます。
一方で、ピッキングされにくい鍵も存在します。ピッキング対策の代表格である「ディンプルキー」は、鍵穴に差し込む部分に複数のくぼみがあり、内部で18本のピンが押し上げられると解錠する構造になっている防犯対策の高い鍵です。ピンを決まった位置に揃える組み合わせ数が多いほど防犯性は高く、ピッキングしようとしても解錠に相当な時間を要します。ディンプルキーのほかにも「ウェーブキー」や「マグネットタンブラーシリンダー」などがピッキングされにくい鍵としてあげられます。
そもそも鍵穴がない鍵もピッキングには大変有効で、電気錠や電子錠があげられます。例えば、カードキーを用いて解錠するのは、不特定多数の人が出入りする宿泊施設や社員数の多いオフィスで用いられることが多いです。近年ではマンションや一般家庭でも導入が増えており、鍵穴がないためピッキング被害から家を守ることができます。カードキーほかにも、暗証番号キーや指紋認証キー、生体認証キー、スマートロックなどが解錠方法としてあげられます。電気錠や電子錠は、オートロック機能が標準装備として備わっていることが多いです。自動で施錠されるため、鍵をかけ忘れる心配がありません。警察庁の統計によると、空き巣の侵入手口として「無締り」がもっとも多いと言われていることから、施錠を忘れずに行うことが防犯対策の第一歩と言えます。古いタイプの鍵はピッキングの被害に遭いやすいため、ピッキングされにくい防犯性の高いシリンダー錠や電気錠や電子錠といったキーレスへの鍵交換をおすすめします。
ピッキングの防犯対策として、防犯性の高い鍵に交換するとピッキングでの解錠に時間がかかるため、不法侵入を第三者に目撃される可能性が高くなります。鍵交換以外にも、二重で鍵をかける防犯対策があります。ワンドア・ツーロックとも呼ばれ、別々の鍵、もしくは同じ鍵を使い、二重で施錠を行うことでピッキングに時間を要します。たとえ同じ鍵だとしても、侵入までの時間をのばせることに変わりはなく、侵入を回避する可能性が高まります。二重鍵をするためには、扉自体のリフォームか新たに補助錠を設置する方法があります。補助錠の取り付け箇所は、主錠から離れた位置にあったほうがよりピッキングされにくく、防犯対策につながります。賃貸物件の場合、玄関の鍵交換や補助錠の取り付けは、退去時のトラブルを避けるためにも、大家や管理会社への確認が必要です。
鍵交換や補助錠の取り付け以外のピッキング対策で、センサーライトや防犯カメラを取り付ける方法があります。センサーライトは、人が近づくと反応して自動でライトが付く仕組みとなっています。設置することにより、空き巣への威嚇効果や侵入していることが周囲に気付かれやすくなります。防犯カメラにおいては、犯行の一部始終が録画されるだけではなく、抑止力としても防犯効果を発揮します。周囲への警戒を呼びかける防犯グッズとしては、防犯センサーやピッキングアラームがあります。扉の開閉やピッキングの振動に反応し、ブザーが鳴り響く仕組みで、空き巣を威嚇すると同時に、周囲に警戒を呼びかけることができます。ピッキング被害に遭わないためにも、家の設備を見直したり防犯性の高い製品を取り付けたりと、日頃から防犯意識を高めることが大切です。