サムターン回し（さむたーんまわし）

扉の室内側についている、鍵を開け閉めするためのツマミのことをサムターンと言います。扉には、デッドボルトというカンヌキがついており、扉から出たデッドボルトが扉枠にあるストライクと呼ばれるくぼみ部分に入ることで、カンヌキがかかり施錠される仕組みとなっています。室内側からはサムターンを、外側からは鍵を差し込んで回すとデッドボルトが動いて施解錠できます。サムターンのツマミが施錠中は横向き、解錠中は縦向きになるので、鍵の閉め忘れを確認する際に参考にしましょう。

サムターンのメリットは、簡単に施解錠でき、触れることができれば誰でも扱えることです。一方で触れることさえできれば開錠できるという防犯上のデメリットにもなりえます。つまりサムターンに届けば外からでも開錠が可能です。このように扉の外から、室内側にある鍵を開け閉めするためのツマミ（サムターン）を直接的に回すことで、不正に開錠する犯罪手口を「サムターン回し」と言います。

不正に開錠する手段としては、「扉に電動ドリルなどの工具を使って穴を開ける」「ドアスコープを壊す」「扉の郵便受けを壊す」などで通り道を作り、そこから直接手を差し込んだり器具を入れたりしてサムターンを回します。扉に穴を開ける手段は、電動ドリルなどの工具を使って扉のドアノブあたりに穴を開け、そこから器具を差し込んで開錠する方法です。電動ドリルで穴を開けることは簡単で素早く行える手段となります。一方、穴を開ける際の電動ドリルの音が近隣に聞こえて目立つため、侵入者にとってはリスクが大きくなります。ドアスコープを壊す手段は、扉についている小さなのぞき穴であるドアスコープを外から壊して取り外し、そこから器具を入れて開錠する方法です。ドアスコープはペンチやドライバーで簡単に取り外すことができ、大きな音がしない点が特徴となります。扉の郵便受けを壊す手段は、扉の郵便受けをバールなどの工具で壊して、手や器具を差し込んで開錠する方法です。郵便受けの形状によっては、壊さずに器具を入れるだけで開錠される恐れもあります。ドアスコープや郵便受けが設置されている扉は、防犯性が低いと言えるでしょう。

サムターン回しの被害に遭ってしまったら、まずは警察に通報しましょう。盗まれたものはないか、室内の様子はどうかなどが気になると思いますが、室内に侵入者がいる可能性があります。鉢合わせてしまうと大変危険なので、通報後は室内に入らずに人の多い場所などで待つようにしましょう。

サムターン回しを防止するには、力を加えると外れやすいマグネット式のサムターンや外からは回せないサムターンカバーなどが効果的です。ただし工具を使って扉に穴を開けた後、プラスチックでできたサムターンカバーを加熱することで、変形させたり、溶かしたりして開錠する手口もあります。サムターンカバーを使用するよりも、マグネット式や脱着式のサムターンを取り付ける方が防犯性が高いと言えます。また、扉の郵便受けからの通り道を塞ぐドアポストカバーやドアスコープからの通り道を塞ぐ防犯ドアスコープ、鍵穴を増やすといった防犯対策も有効です。これらは実際の防犯性が高まるのはもちろん、通り道をつくる手間となるため侵入をあきらめる抑止効果ともなります。さらにこのような対策がすでにとられた防犯性の高い家に住んだり、オフィスを利用したりすることも大切です。

不正な開錠による空き巣被害を防ぐためには、より防犯性の高いサムターンの取り付けや付け替えが効果的です。サムターンの取り付けに使用する器具は、プラスドライバーとマイナスドライバーのみで、自力で行うことも可能です。ただし自力で行うことは、サムターン選びのミスやしっかりとした取り付けができないという防犯上のデメリットにもつながります。サムターン選びを間違えるとその分余計な費用がかかります。取り付けが甘く、少しでも隙間ができてしまうと不正な開錠につながり、防犯性の高いサムターンに付け替えた意味がありません。サムターンの交換によるリスクを減らすためには、鍵の専門業者に依頼することが理想的です。業者に依頼することで、余計な費用を抑え、しっかりと防犯性を高めることができます。また作業時間を省くことも可能です。ただし、高額な費用を請求する業者もいるので、相見積もりをとるなどし、納得した上で業者に依頼しましょう。

鍵をなくした際などに自分で外からサムターンを回して開錠しようと思うかもしれませんが、素人が簡単にできるものではありません。サムターンに器具が当たっているか見えないため、感覚での作業となり技術が必要です。また業務に使用するなどの正当な理由がない限り、サムターン回しに使用する器具の所持や購入は法律で禁止されており、犯罪となるので注意しましょう。

賃貸のアパートやマンションなどでは、サムターンの取り付けや付け替えを勝手に行うことは基本的にできません。自分でできるサムターン回しの対策として、サムターンカバーの使用は簡単ですが、防犯面で不十分です。サムターンの取り付けや付け替えを行いたいときは、大家さんか管理会社に許可をとりましょう。空き巣被害に遭ってからでは遅いので、できることからはじめて防犯性を高めておくことが大切です。