ウェーブキー（うぇーぶきー）

ウェーブキーとは、鍵の表側に波に似た流線型の溝を彫っている鍵で、優れた防犯性を備えています。その形状から「彫刻キー」という別の名前で呼ばれることもあります。側面がギザギザとした形状の従来からの鍵とは異なり、ウェーブキーはギザギザとした凹凸が側面にないため、従来の鍵とウェーブキーとの区別は容易です。ウェーブキーは施解錠の際に鍵をシリンダーに差し込んで回す感覚が非常に軽くなめらかなため、使用感が良いのが特徴となっています。

ウェーブキーは1990年代の後半以降、高級車を中心に用いられ、次第に一般車にも使われるようになりました。2000年代になるとその防犯性の高さが評価され、車以外の玄関ドアの鍵や金庫の鍵などにも採用されはじめました。ウェーブキーを業界に先駆けて住宅用の鍵に採用したのは、東大阪市に本社のある家研販売株式会社です。現在では、株式会社ユーシン・ショウワや株式会社LIXILなど、さまざまな会社で販売されています。ユーシン・ショウワのWXシリンダーは、鍵違い数は2,800億通りあるので、耐ピッキング性能に優れています。鍵の差し込み口からのホコリや砂の侵入に対して強い耐久性を持っています。

ウェーブキーは埃や水気、異物などに比較的強い鍵です。一方で使い続けると、経年劣化で鍵をスムーズに回せなかったり、鍵を差した時にわずかな引っ掛かりを感じたりなど不具合が出る場合があります。従来の鍵にはないウェーブキーの構造上の特徴で、高い圧力がかかると起こります。ウェーブキーはなめらかな使用感が特徴の1つとなっているため、不具合が出た際には早めに気づきやすいです。ウェーブキーをできるだけ長く使用するためには、日頃から鍵の汚れや埃をはらうなどの簡単なメンテナンスが大切です。ウェーブキーは高精度な鍵であるため、鍵や錠の念入りなメンテナンスに関しては、個人で勝手に判断せず、専門の業者への依頼が必要となります。

ウェーブキーの構造は「サイドバー方式」と呼ばれています。シリンダー内部に「サイドバー」と呼ばれる回転力を受け止めるピンを配置しています。そのため、不正にシリンダーに回転力を加えてもタンブラーが動きません。正しいウェーブキーが差し込まれたときにのみ鍵の波型の溝に合わせてタンブラーが移動し、鍵の表側の波型の形状を再現することでサイドバーが回り解錠します。ピッキングの道具や針金などをウェーブキーのシリンダーに差し込んでも内部のタンブラーが動かず、サイドバーを回すことができないため不正解錠できない仕様になっています。ウェーブキーは、そもそも車のピッキングに対抗するための鍵として開発されたことから、防犯性が高く従来の鍵とは構造が異なるため、ピッキングの原理が使えないのです。

高い防犯性のあるウェーブキーですが、その高い防犯性ゆえに鍵を無くした場合や、予備の鍵を作る際に合鍵の作成が難しい場合があります。ウェーブキーの合鍵を作成するには、鍵の加工の高度な技術を持ち、ウェーブキー専用の加工をする機材を備えた鍵業者に依頼する必要があります。そのため、ウェーブキーは従来からの鍵に比べて、合鍵作成のコストが高くかかる傾向にあります。ウェーブキーの合鍵作成をメーカーに注文した場合は、取り寄せに２〜３週間かかるケースもあるため注意してください。万が一ウェーブキーを紛失したとき、緊急に鍵業者に解錠の依頼をしても対応できない場合があるため、ウェーブキーの紛失や破損には気をつける必要があります。そういった場合に備えて、ウェーブキーの作成に対応した鍵業者をあらかじめ探しておくことにより、万が一の場合の対応だけでなく、定期的なメンテナンスを依頼できるので安心です。

ウェーブキーと同じように防犯性の高さを誇る、ディンプルキーという鍵があります。ディンブルキーは鍵にギザギザの凹凸がなく、表側に小さな丸いくぼみが複数ある鍵です。ディンプルキーはウェーブキーと同じくピッキングに強く、高い防犯性のために複製が難しい鍵です。この2つの鍵は施解錠の際の仕組みが異なります。サイドバー方式のウェーブキーとは異なり、ディンプルキーは小さな穴のくぼみを利用して施解錠します。従来からの鍵と同じくピンシリンダーで解錠しますが、一般の鍵にあるギザギザを丸いくぼみにしたことで格段に不正解錠されづらくなりました。繰り返しの使用による鍵の劣化はさほど早くはありませんが、丸いくぼみに埃や異物が入って鍵が開かなくなる不具合が発生することがあります。ディンプルキーも種類によっては、ウェーブキーと同じく、合鍵を作成するのに日数がかかったり、専用の機材が必要なため対応できない業者があります。ディンプルキーとウェーブキーの仕組みを両方備え持つ鍵も作られています。ウェーブキーの波型の溝と、ディンプルキーの丸いくぼみの組み合わせによって、より複雑で高い防犯性を持つ鍵となっています。