蝶番(ちょうばん)
「ちょうつがい」や「ヒンジ」とも呼ばれる蝶番は、軸となる中心の金具に2枚の羽板が取り付けられた金属製の部品で、扉と枠ぶちなど別々の材料を繋ぎ合わせ開閉させる役割を果たします。その見た目や動きが蝶々に似ていることから蝶番と呼ばれていますが、建設業界での多くは「丁番(ちょうばん)」と当て字を使った呼称で親しまれています。蝶番は建設現場や一般家庭の家具などに多く用いられており、大きさや種類も豊富なため取り付けを行う際は用途に合わせた形を選ぶことが大切です。
最も多く目にするポピュラーな形状は「平蝶番」と呼ばれる種類で、室内扉や家具など比較的軽めの素材に適した部品です。蝶番を閉じると繋いだ材料の間に羽板分の隙間ができてしまうので、隙間を埋めるため材料自体に掘り込みをする必要がありますが、羽板同士が背押しされた隙間が狭いタイプの蝶番であれば掘り込みをせず取り付けることもあります。ある程度、重さのある玄関扉やオフィス扉などには軸が太く頑丈な構造の「旗蝶番」やシンプル且つ耐久性のある「儀星(ぎぼし)蝶番」などが適しています。これらは「抜き差し蝶番」と呼ばれる種類で「旗蝶番」や「儀星蝶番」などは2枚の羽板が、軸から上下に分かれる特徴があり吊り込みがしやすいメリットがあります。メンテナンスの観点からも、上から差し込んである扉本体を少し持ち上げるだけで枠ぶち側から簡単に取り外せるので、錆び取りのお手入れがしやすい点があげられます。
頑丈な金具で構成された蝶番は耐久性もあり長く使用できますが、玄関扉やオフィス扉など外気に触れることの多い箇所に取り付けてあるものは錆びてしまう場合があり、扉を開閉するたびにきしむ音が発生してしまいます。また蝶番の変形により不具合が生じると、扉が傾いてしまい床や扉下部の損傷、鍵の開け閉めが困難になるなど居住環境にも影響を及ぼしてしまうので、状況に応じたメンテナンスを行うことが大事です。扉の開閉に不具合を感じたまま放置してしまうと扉や枠ぶちの損傷が拡大するだけでなく、鍵の故障にもつながるので錆びのお手入れや建て付け調整など原因を特定し対処する必要があります。
きしむ音が気になる場合は、ホームセンターやネット通販に販売してある蝶番専用のグリスやスプレーなどの潤滑剤を金属部分に注し、錆びを拭き取ることで開閉動作の滑りを補います。このとき余分な潤滑剤をしっかり拭いておくと錆びの悪化を予防できます。ただし、蝶番専用以外の製品を使用してしまうと錆びや不具合が加速する原因となるので、使用する潤滑剤には注意が必要です。またマンションの玄関扉できしむ音が鳴り続けていると、近隣住民に外出や帰宅時のタイミングを知らせてしまうケースもあるので、防犯対策の一環としても早急に対処しておくことが好ましいです。
室内扉が枠ぶちや床に当たるなどの不具合が起こる場合、蝶番の種類によってはプラスドライバーを使用し個人で調整可能なものもあります。「3次元蝶番」と呼ばれる部品はねじの数が非常に多く、固定用と調整用があるため左右・前後・上下の建て付け調整ができます。上下の調整方法としては、蝶番の軸上部についているキャップを外すとねじがあるので上に引き上げる際は右回し、下に引き下げる際は左回しにねじの調整を行います。扉が枠ぶちの左右に当たらないよう改善したい場合は、羽板に付いている固定用ねじを緩めたあと調整用ねじを左回しにすると蝶番側、右回しにするとラッチ側に寄るので少しずつ調整を行い、最後に緩めた固定用ねじを締め直すことで改善できます。また扉が枠ぶちより前後に出て隙間ができている場合は左右調整のときと同様、羽板の固定用ねじを緩め前後の調整用ねじを左回しにすると枠側に、右回しにすると扉が蝶番の軸側に寄るのでしっかりと扉を支えながら隙間が一定になるよう調整を行います。作業を行う際は電動ドライバーやインパクトドリルなどパワーのある工具を使用するとねじ頭が潰れる恐れがあるので、手動のプラスドライバーで一気に回さず少しずつ調整を進めていくのがポイントです。
ねじの緩みが原因で扉の開閉が困難な場合はドライバーで締め直し改善できますが、個人で調整ができない種類の蝶番や経年劣化による歪みが原因で、ずれが生じてしまい扉や鍵の開閉が困難になる場合は蝶番の交換時期といえます。ホームセンターにも蝶番は販売してありますが、大きさや種類が豊富なため取り付け扉に合った部品選びが重要です。また蝶番を交換する際には重さのある扉を支えたり枠ぶちとの間隔や隙間の調整を行ったりと、位置決めが大変難しくバランスを崩して事故に繋がる危険性もあるので、個人で修繕を行うよりも専門業者へ依頼をするのがスムーズです。専門業者を介した扉の修繕は作業スペースとなる床や周辺壁の養生を行います。複数人で取り付け作業を行うため設置の際に考えられる事故や家具に傷を付けてしまうなどのトラブルを軽減できるだけでなく、不具合の原因をきちんと見極めた上で蝶番の交換や調整を行うので再発リスクも抑えられます。