電気錠の基本的な仕組み
電気錠は、電気の力で動く仕組みの錠前を指します。マンションのエントランスやオフィスの出入り口などに設置されている「オートロック」は、電気錠の代表的なものとして一般に知られています。電気錠を導入する目的は、電気で動く仕組みを利用して扉に関わる動作を楽にし、かつセキュリティ性を高めることにあります。今回は、電気錠がどのように動くか、その仕組みについて詳しく解説していきます。ご自宅の扉のセキュリティ向上を考えている方は、この記事で電気錠の仕組みについて理解を深めた上で、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
◎電気錠の操作
電気錠とは、その名前が表しているとおり、電気の力で施解錠ができる仕組みの錠前を指します。物理的な鍵を所持することなく、リモコンやセンサー、スマートフォンなどを使用したり、暗証番号を入力して認証することにより、自動で扉を施解錠することができる仕組みとなっています。ピッキングのような犯罪から建物を守ることができ、近年では防犯意識の高まりも相まって、電気錠の利用者は増加傾向にあります。より便利に利用したいことから、電気錠にはさまざまな種類があるのも特徴です。利用する場所や用途により、自分に合ったスタイルの電気錠を探すと良いでしょう。
電気錠でできる操作は、主に施錠と解錠です。機能ごとに3つのモードに分けられています。1つめのモードは「Aモード」と呼ばれる、閉扉自動施錠機能です。このモードでは、扉が閉まるタイミングで同時に施錠も行ってくれます。閉扉自動施錠機能はさらに2種類に分けられ、解錠後に一定の時間が過ぎると施錠される仕組みの「1回解錠」と、長い時間解錠しておきたい場合に利用される仕組みの「連続解錠」があります。1回解錠は、私たちがよく知るいわゆるオートロック機能を指します。連続解錠は、例えば宅配業者が荷物を大量に運ぶ際など、長時間解錠しておきたい場合に利用される仕組みになります。2つめのモードは「Bモード」と呼ばれる、施解錠繰り返し機能です。このモードでは、現在が施錠中なら解錠、解錠中なら施錠と言った具合に、電気錠の施錠と解錠を交互に繰り返す仕組みになっています。3つめは「Eモード」と呼ばれるモードで、Bモードと同じく施解錠を交互に繰り返して行う仕組みです。Bモードと大きく異なる点は、サムターンなどで物理的に解錠した場合には自動施錠を行わないという点です。電気錠は、顔や指紋などを利用した生体認証やカード、リモコン、暗証番号を入力する認証など、さまざまな認証操作を行うことで解錠できます。また、オフィスなど大人数が出入りする場面では、電気錠と入退室管理システムと連動させたり、同時に勤怠管理を行うところもあります。住居であれば、電気錠と警備会社を連携させたり、火災報知機と連動することで防災にも役に立ちます。アンチパニック機能と呼ばれる、緊急時のための機能も備わっている仕組みのものもあり、非常時でも安心です。電気錠は配線工事を行うため、簡単に取り外しは出来ない仕組みになっています。そのためセキュリティ性が非常に高く、また認証速度や反応速度も安定しているため、現在多くのところで導入が進んでいます。

◎電気錠の仕組み
電気錠は、現在使っている扉の通常の鍵部分を交換するだけでは使えません。電気錠は、「電気錠本体」「操作部分」「制御部分」の3つの部分から成り立っており、これらがシステマティックに連動することによって初めて動く仕組みが電気錠です。実際の操作の仕組みは、以下のようになっています。
①操作部分
操作部分にタッチ、リモコン操作、暗証番号入力などのアクションを行うことで、制御部分に解錠の信号を送る。
↓
②制御部分
操作部分からの解錠の信号を受け取り、電気を使って電気錠本体に解錠の命令を伝える。
↓
③電気錠本体
制御部分からの命令により解錠する。
制御部分は私たちが日常では目にすることがない部分ではありますが、制御部分こそが電気錠の特徴である「電気で動いている」部分に当たります。電気錠の中枢の役割を担っており、この制御部分のおかげで、操作部分と電気錠本体がスムーズに連動し、認証処理などが安定的に行われています。次にそれぞれの手順ごとに各部品をご紹介します。

【操作部分】
電気錠を施解錠するための最初の部分であり、鍵の代わりとなるアイテムを操作したり近づけたり、生体認証や暗証番号を打ち込んだりすることによって、ドアを解錠できる部分です。通常、電気錠本体と近いところにあります。操作部分の認証方法にはさまざまな種類があります。1つの電気錠に対し、複数の操作部分を組み合わせることができるので、人数や用途に応じて、複数の手段を組み合わせて利用すると良いでしょう。
〇カードキー
カードで解錠を行う仕組みで、ホテルなどでよく使われています。この仕組みには、磁気テープが貼ってあるもの、ICチップが内蔵されているもの、バーコードが印字されているものなどがあり、電気錠の操作部分にカードキーをかざしたり、差し込んだりすることで解錠ができます。カードキー利用者の人数が多くても登録や削除が簡単にでき、また紛失したカードは無効化して再発行することもできる仕組みなので、大人数のセキュリティ管理が必要な場所での利用が効果的です。
〇リモコンキー
リモコンキーを使用する仕組みで、リモコンキーのボタンを押すだけで簡単にドアの解錠ができます。内部的な仕組みとしては、リモコンのボタンが押されると、制御部分が電波を受け取り、電気錠本体に解錠の信号を伝えるというものです。電波方式なのでカバンやポケットのなかから操作ができ、わざわざ取り出す手間がないのが特徴です。ただし、リモコンキーを持ち歩く必要はあるので、家のなかに置き忘れてしまったりすると解錠することができません。
〇暗証番号入力
タッチパネルなどに暗証番号を入力することで解錠できる仕組みです。暗証番号の入力を連続して一定回数間違えてしまうと、ロックがかかる、通報が発生するなどの不正予防機能が付いている仕組みもあります。カードキーやリモコンキーのように、鍵の代わりとなるアイテムを持ち歩く必要がないので、紛失する心配がないことはメリットですが、セキュリティ強化のため定期的に暗証番号を変更する必要があります。
〇生体認証(指紋、顔、静脈など)
あらかじめ電気錠に登録しておいた生体情報を読み取り、信号を送ったのが本人であるかどうか確認してから解錠する仕組みです。暗証番号キーと同じく、鍵の代わりとなるアイテムを持ち歩く必要がないので、紛失する心配がありません。また、偽造される可能性が非常に低い仕組みになっています。暗証番号のように覚える手間がないのもメリットです。ただし、温度や湿度の変化や乾燥、体調などによっては反応しにくいことがある仕組みのため、ほかの操作と組み合わせて利用するのも良いでしょう。
〇タッチキー
物理的な鍵の代わりにタッチキーを使用する仕組みで、電気錠の操作部分にあるセンサーに触れるだけで解錠することができます。タッチキーがリモコンキーになっています。センサーに近づくと、電気錠の制御部分がその電波を受け取り、本人であるかどうか確認して解錠する仕組みになっています。鍵の代わりとなるアイテムをわざわざ取り出す必要がないので便利ですが、タッチキーを持ち歩く必要がある仕組みなので、置き忘れてしまうと解錠することができなくなります。
〇スマートフォンのアプリ
スマートフォンのアプリを使用して解錠する仕組みです。近年普及率が高まっている、いわゆる「スマートロック」と呼ばれる仕組みで、スマートフォンさえあれば解錠ができるのがメリットです。スマートフォンの充電がなかったり、うっかりスマートフォンを置き忘れてしまった場合など注意が必要ですが、今や日常生活に欠かせないスマートフォンを鍵にすることで、扉の運用が格段に楽になる仕組みと言えます。
【制御部分】
電気錠の制御部分は、制御盤に操作スイッチが付いた仕組みのものや、操作部分と制御部分が一体型になっているものもあります。操作部分と電気錠本体の仕組みをつなぐ架け橋であり、電気を使って施解錠の操作を行う司令塔の役割を果たしています。また、電源供給のコントロールも行っていますが、電気とつながっているので、停電時は操作ができなくなります。なお、停電時の制御部分の動作は、電気錠の種類にもよりますが、自動で施錠する、停電前の状態を維持する、自動で解錠する、のいずれかとなります。停電時にどのような動作をするか、あらかじめ設定しておけるものもあります。制御部分には操作履歴や入退室履歴などの情報が記録されており、入退室管理システムや在室管理システムなどを利用するにはパソコン端末と連動させる必要があります。
【電気錠本体】
電気錠本体は、錠前本体に当たります。通常の錠前と同様に扉に取り付けられるものを指し、扉を物理的に開閉したりロックする役割があります。一般的な住宅の扉のようにハンドルや取っ手が付いている仕組みのもの、鍵穴の部分がない仕組みのものもあります。通常は扉の内側に設置されますが、枠側に取り付けるタイプやマグネットタイプのものなど、さまざまな種類があります。外見だけでは通常の扉と電気錠の扉の見分けは付かないものがほとんどです。取り付けたいと考えている電気錠と扉の間に互換性がない場合もあるので、もし電気錠を取り付けたいと考えている場合には、事前にしっかり確認しておく必要があります。
◎電気錠を導入するメリット・デメリット
オフィスや住宅のセキュリティ性を飛躍的に高めてくれる電気錠ですが、実際に導入する際に出てくるメリットやデメリットはどんなものがあるのでしょうか。電気錠を導入する1番のメリットとして挙げられるのは「物理的な鍵を持たなくて済むこと」です。電気錠の施解錠の操作はさまざまですが、従来の鍵を出し入れするよりも、扉の出入りが格段に楽になることは特筆すべき点です。オートロックのように自動施錠の機能が付いているので、施設のセキュリティ面の大幅な向上が期待でき、またそれによって得られる安心感ははかり知れません。電気錠を導入すれば、「ドアを締め忘れたかも…」といった心配をする必要がなく、空き巣被害などの対策としても非常に有効です。カードキーなどで施解錠している場合は、紛失した際の複製、再発行も簡単にできるので、子どもに鍵を渡すのが心配なご家庭でも電気錠にすれば防犯面においても安心できます。
一方、電気錠を導入する際の最大のデメリットと言えるのが、取り付け工事の際にそれなりの費用が発生することです。設備投資という意味で重要な意味を持つ電気錠ですが、設置には基本部品の3つ(電気錠本体・操作部分・制御部分)に加え、通電金具や配線ケーブルのほか、設置工事費用も必要になります。そのため、初期費用が高額だからと検討を中断してしまう方もいるかもしれません。また、費用以外の面から見てみると、電気錠は電気で動く仕組みなので、基本的に停電時は使用することができません。停電の際にどのようなオペレーションが必要か、電気錠導入の前にしっかり確認しておくことが大切です。電気錠の種類によっては、停電時に自動で解錠するタイプや、非常解錠用の鍵穴がある電気錠もあります。また、電気錠に限った話ではありませんが、暗証番号などを利用して認証を行う場合は、情報の漏洩に十分注意する必要があります。

◎まとめ
電気錠は仕組みによりさまざまな種類があり、取り付けることでセキュリティ性能を上げることができます。メリット・デメリットの項目で挙げたように、取り付けに初期費用としてそれなりのコストがかかることは事実ですが、代わりに防犯性能や利便性が向上するので、長期的に考えれば良い設備投資になるとも考えられます。自宅のセキュリティ向上を考えているけど、「電気錠を家の扉に取り付けることはできるの?」と思われる方もいるかもしれません。電気錠は、扉として使われている開き戸、引き戸、かまち扉のすべてに取り付けることができます。取り付ける種類によって費用も違ってくるので、ご相談に応じて見積もりを出させていただきます。お気軽にカギ舎までお問い合わせください。