引き戸の隙間ができる原因と対処法
住宅などに使われている引き戸は、長年使用していると開閉しづらくなり、きちんと閉めきったつもりでも隙間が開いてしまうことがあります。この記事では、引き戸の構造や引き戸に隙間ができる原因、隙間をなくすメリットなど具体的にご紹介します。
◎引き戸の構造
引き戸は、大きく分けて床にレールを設置するレール式と上から扉を吊るす上吊り式があります。上吊り式にはさらにアウトセット引き戸やソフトクローズ引き戸にわけられます。レール式の引き戸は上部に鴨居と上部ガイド、ドアを開ける側に縦枠、下部にレールがついています。ドアには引き手がついており、これを持ち引き戸を左右に開閉し、引き手付近にはラッチとストライクがついています。日本語でかんぬきを表す言葉であるラッチとはドアの側面から出ている金具のことを言います。引き戸を閉めた際にストライクと呼ばれるラッチを受ける部分にうまく収まることにより引き戸が開かないように固定されます。上吊り式の引き戸は上部に鴨居レール、下部にレールガイドと引き戸を開閉した際に揺れを抑える役割を果たす振れ止めがあります。ドアを開く側には縦枠があり、反対側に方立(ほうだて)があります。別名柱寄(はしらよせ)、方立柱(ほうだてはしら)と呼ばれる方立とは、柱のない壁に引き戸などの建具を取りつける際に補強する意味で立てる縦長の部材のことを言います。上吊り式のドアの上部には吊り車、開く側には引き手、ラッチとストライクがついています。一般的な上吊り式とアウトセット引き戸はどちらもドアを吊り車で吊っている点は共通していますが、上吊り式は壁の内面に設置するのに対してアウトセット引き戸は壁の外側に取り付けるのが違いとなっています。ソフトクローズ引き戸はゆっくり閉まるドアのことを言い、引き戸を閉めた際に残りの幅が5〜10cmになった時に機構が作動しドアがゆっくりと閉まる仕組みです。引き戸の閉め忘れを防ぐことができスムーズに開閉しやすいため力の弱い小さな子どもやご高齢の方の負担を軽減することができます。ゆっくり閉まることで手を挟んでケガをするリスクが低くなるのもソフトクローズ引き戸の特徴となっています。

◎引き戸の隙間ができる原因
引き戸のレールにゴミやホコリが詰まったり引き戸の戸車のタイヤ部分に髪の毛や糸くずなどが巻き込まれると、戸車がスムーズに動かなくなり縦枠とドアの間に隙間が生じてしまうことがあります。このような場合はレールのゴミを掃除機で吸い取ったり手で髪の毛を取り除くと隙間をなくすことができます。引き戸に隙間ができてしまう前に、定期的にレールや戸車の状態をチェックして普段から掃除などメンテナンスすることが大切です。経年劣化によりレールが歪んでしまったり固定しているビスが緩んでずれてしまうことがあります。レールには床面に埋め込むタイプのY型、床面からレールが出ている丸型タイプがありますが、特に丸型は外から衝撃が加わりやすく歪んでしまうことが多いため注意しましょう。レールを固定するビスが緩んでいる場合には、締め直すことで引き戸の建て付けが良くなり隙間が改善することがあります。戸車によりレールが削れて摩耗すると引き戸が本来の位置からずれて隙間ができてしまうことがあります。隙間とともにレールを固定している敷居や床面などにダメージがある場合には、専門の業者に依頼して隙間に対処するようにしてください。引き戸を使い続けると戸車のタイヤ部分を支えている軸が曲がったり折れてしまい隙間ができてきます。レールだけではなく戸車が摩耗してしまったり折れてしまった場合には交換が必要となります。戸車の交換をするためには引き戸を外さなくてはなりません。引き戸は想像以上に重量があり、外す際にドアが倒れて破損したり倒れてきたドアにぶつかりケガをする可能性もあるため戸車の交換は扉の専門業者に依頼しましょう。木材には吸湿性があるため湿気を含み、伸びたり縮んだりする特性から、天然木である無垢材や合板材などの木製の引き戸は、乾燥や湿気など温度差で歪んだり反ってしまうことがあります。引き戸の歪みがひどい場合やドアそのものが劣化したり破損し隙間ができている場合は扉の交換が必要になってきます。地震や大雨などの自然災害により起こった地盤沈下で住宅自体が傾くと枠や敷居、鴨居と引き戸が合わなくなり、動きが悪くなると同時に隙間が生じてきます。レールや戸車に特に問題がないにもかかわらず家のなかの引き戸やそれ以外のドアが動きにくくなった場合は住宅の歪みや傾きである可能性が高いと言えるでしょう。住宅が傾くと傾斜ができるため何もない場所でもつまずきやすくなったり、建て付けが悪くなり隙間ができた引き戸を無理に閉めようとして指をはさんでケガをする危険性が高くなります。隙間をなくすためには引き戸の鴨居や敷居をドアの形に削り合わせたり、一旦ドア枠などを外して取り付け直すという専門的な作業が必要となります。これらはDIYでは行うことは難しく、無理に修繕しようとするとかえって事態を悪化させてしまうこともあります。隙間について正しく診断を行い修理する必要があるため、速やかに扉の専門業者に相談してください。

◎引き戸の隙間をなくすメリット
引き戸の隙間をなくすと部屋の気密性を高め、空気の出入りを防ぐことができます。室内の空気が漏れにくくなり外気も侵入しにくいため、隙間があると逃げてしまうエアコンの冷気やヒーターの温風などを部屋に閉じ込めることができます。廊下からの隙間風も入ってこなくなるため冷暖房費や電気代の削減にもなり、エアコンなどの設定温度を下げることができればエコロジーにもつながります。浴室などに隙間風が入り寒くなるとリビングは暖かいのにお風呂が寒い状態となります。特にご高齢の方のいる家庭では、隙間風によりヒートショックの危険性が高くなることも考えられます。ヒートショックとは急激な気温の変化により短時間で激しく血圧が上下し、心臓や血管などにダメージを与え心筋梗塞や脳内出血のリスクが高まることを言います。隙間風などにより脱衣所の気温が下がると血管が一旦収縮しますが、湯船に浸かり身体が温まると血管が一気に広がります。ご高齢の方は一般的に体感温度を感じにくいと言われており、血圧を正常に保つ機能が低下していることがあるため、ヒートショックが起こりやすいとされています。引き戸の隙間をなくしたり床にマットやすのこを敷くことで温度差が少なくなります。身体への負担を軽減でき、ヒートショックのリスクを減少させることにつながります。引き戸の隙間をしっかりと埋めることは部屋の防音対策にも大きな効果を発揮します。隙間をなくすことにより廊下などから聞こえる音を半減します。例えば、子ども部屋などにピアノを置いている場合やトイレや浴室などを使用している際に、外に音が漏れるのを防ぐことができるので、隙間を改善するのはメリットが大きいと言えるでしょう。玄関ドアの隙間ができているとその隙間から虫が侵入してくる可能性があります。夏場など暑い時期には虫が多く発生し玄関や窓などから侵入した小さな虫が室内に入り、わずかな隙間から部屋のなかまで入り込んでくることがあります。虫に腕や足を刺されると腫れたり炎症を起こしてしまうことがあるため、部屋に入れないようにするためにも隙間対策は重要です。リビングと隣の部屋との間に引き戸があるとドアを開け放つことで解放的で広い空間を作ることができます。しかし引き戸に隙間があると、夜隣の部屋で寝るときにリビングからの明かり漏れが気になりなかなか寝付けないことがあります。特に赤ちゃんの場合は、少しの明かりにも敏感に反応し夜泣きや早朝に起きてしまうことがあります。大人でも隙間からの明かりにより眠りが浅いなど睡眠のトラブルにつながる可能性があるため、隙間はできるだけ早くふさぐのがよいでしょう。キッチンと寝室が近い場合、引き戸に隙間があると調理の匂いが漏れて寝室の匂いが気になったり、ベッドや枕など寝具に匂いが染み付いてしまうことがあるため早目に隙間をなくすようにしてください。次に引き戸の隙間をなくす方法をいくつかご紹介します。

◎引き戸の隙間をなくす方法
隙間をなくす方法は、引き戸のどこに隙間が開いているかにより対応が異なります。引き戸には調整ネジがついており、それを回すことで隙間を改善できることがあります。和室の障子の引き戸を閉めた際に鴨居または敷居に隙間が開く場合には、引き戸にある上下調整ネジをドライバーで使い回すことにより隙間をなくせます。ネジは時計回りに回すと引き戸が下がり反時計回りに回すと上がります。調整する際には最初にドアを下げて隙間や建て付けなどをチェックするとよいでしょう。洋室の引き戸の場合、縦枠と鴨居に隙間ができた場合は引き戸の上下調整ネジを時計回りに回して、一旦下げてから今度は反時計回りに回し上げてください。縦枠と敷居に隙間がある場合は一旦引き戸を上げてから下げるようにして隙間を調整します。ただしこれらの方法で隙間調整を行う場合ドアを外さなければならないことがあります。引き戸は重いため外す際に体にドアが当たりケガをする恐れがあります。また引き戸の上下調整ネジは微妙な調節が必要です。調節に失敗するとかえって隙間を広げるなど事態を悪化させてしまうことがあるため、引き戸の隙間調整は業者に依頼すると安心です。応急処置として、引き戸に隙間ができた場合は隙間テープを張り隙間風などを防ぐ方法もあります。隙間テープとは両面テープにスポンジがついており、引き戸の隙間に貼ることで隙間風や明かり漏れを防ぐ道具です。テープを貼るだけなのでとても手軽で便利ですが、一時的なものでしかなく根本的な解決にはならないため、完全に隙間をなくすためには業者への依頼が必要です。
◎引き戸の修理は扉の専門業者に依頼
引き戸の隙間を埋めるためにはミリ単位の細かい作業が必要になるため、隙間を改善したい場合は、建具の工事を請け負っている業者に依頼するのが最適です。引き戸のような建具の修理を行うのは建具店ですが、一般的に建具店は工務店に依頼されて作業を行うことが多いため、直接依頼しても断られることがあります。ですからまずは工務店を探して引き戸の隙間をなくす作業を依頼するのがよいでしょう。引き戸が経年劣化により傷んでおり、隙間が開いたことをきっかけにドアを新しく交換する場合は工務店もしくはリフォーム業者などに依頼してください。引き戸の隙間が建物自体の歪みなどから発生している可能性が高い場合は、大がかりな工事も請け負っているリフォーム業者に依頼するといいでしょう。建具店やリフォーム業者などのほかにも、カギを取り扱っている業者でも引き戸の隙間に対応してくれるところがあります。扉の専門業者に引き戸の隙間改善作業を依頼する場合は、内訳が明確にされている見積もりを取りましょう。できれば複数の業者に見積もりを依頼して比較検討するようにしてください。そのとき、見積もりの内容について詳しく説明してくれたり、引き戸の隙間についての疑問や質問に丁寧に対応してくれる業者は優良業者だと言えます。工務店によっては得意分野が異なるところもあるため、これまでの引き戸の隙間修理の経験豊富で実績のあるところを選ぶことも大切です。引き戸の隙間修理を依頼する際には、かかる費用についてはもちろんですが作業後の保証期間やアフターサービスについてチェックすることも大切です。保証期間だけではなく保証内容も業者により異なるため事前に確認しておくようにしてください。引き戸に再び隙間が生じることを想定しアフターサービスについてもしっかりチェックしておきましょう。
◎まとめ
引き戸に隙間ができる原因としては、レールや戸車の不具合や建物の歪みなどが考えられます。引き戸を修理したい場合は、カギの専門業者などに依頼するとよいでしょう。東京に本社を置くカギ舎では引き戸の隙間に関する相談や依頼はもちろん、専門分野であるカギの修理や交換に対応しています。24時間365日年中無休で相談に応じていますので、引き戸の隙間を修理したい場合はお気軽にカギ舎へご連絡ください。