今までは鍵や暗証番号による入退室管理が一般的でしたが、防犯面やセキュリティ面でいくつもの問題を抱えているのが課題となっています。とある建物の管理者向けの鍵トラブルにおけるアンケート結果によると「鍵の盗難・ピッキング被害を受けたことがある」「鍵の紛失が発生したことがある」の割合が高く、防犯性やセキュリティ面で鍵は不安を抱えていることがわかります。一方で「鍵についてのトラブルの経験はない」「防犯やセキュリティについてのトラブルにあったことがない」の割合は少なく、建物の管理者の多くが鍵による防犯能力やセキュリティ面のトラブルを一度は経験しているようです。近年は鍵に代わって指紋認証や静脈認証、顔認証など人の身体の一部を使用した、なりすましを困難とさせる生体認証を導入する企業や施設が増えてきています。理由としては、鍵やIDカードなどモノを使わない手軽さをはじめ、鍵の盗難や紛失、暗証番号の流失といった心配がないためセキュリティや防犯性が高いことが挙げられます。虹彩認証は鍵などに代わる生体認証の中の一つで、高精度・高速なため他の生体認証の中でもトップクラスの精度を誇るとされています。

◎虹彩認証とは

虹彩認証とは、文字通り虹彩を使用する防犯性・セキュリティ能力の高い生体認証の一つです。虹彩認証は1986年にアメリカ特許庁へ、とある眼科医が「虹彩は人によってすべて違うということ」といった内容の特許を申請しました。しかし眼科医では特許を実用化することはできないため、英国にあるケンブリッジ大学のジョン・ドーグマン教授に虹彩認証システムの開発を依頼したのがはじまりです。ドーグマン教授は虹彩認証システムの開発で、極座標を使用した虹彩情報のコード化に成功し、虹彩認証システムの特許を獲得しました。その後いくつもの企業に虹彩認証システムのライセンス付与がはじまり、今では多くの場所で鍵やIDカードの代わりに虹彩認証システムが利用されています。虹彩は人間の身体の中のしわの一部であり、眼の水晶体の前にある筋肉組織でできているヒダの部分を指します。しわの一部なので生まれてから徐々に形成されるものになります。完成するまでの期間個人差はありますが、だいたい生まれてから2年ほどかかるそうです。また一度出来上がると生涯変わることはないため、身体の一部を使用して個人を特定し、セキュリティや防犯面を強化する生体認証にはうってつけです。同じ人でも毎回多少の変動がありますが、イギリスの国立物理学研究所の調査によると、虹彩認証の誤認証は100万分の１に満たないとされているため、何か相当な対策をして偽装をされない限りは虹彩認証が誤認証をすることはないことから、鍵などに比べて虹彩認証の防犯性は非常に高いとされています。

◎虹彩認証の仕組み

虹彩認証に使用される虹彩と呼ばれる部分はいったいどこにあるのでしょうか。虹彩は黒目と白目の間にある焦げ茶色などの色をしたドーナツのような形をした部分を指します。色が人種によって異なり、青色や緑色、灰色など虹のように多様なため、「虹彩」と呼ばれています。明るさによって瞳孔の大きさが大きくなったり小さくなったりするのも虹彩が動くことによっておこるもので、カメラのレンズの絞りのような役割をしています。虹彩の模様は複雑なパターンが指紋以上にいくつも存在し、同じDNAを持つ一卵性双生児でさえも違う虹彩となります。虹彩認証はその虹彩部分の細かな線状の模様が人それぞれで全く異なるため、それを虹彩認証で使用します。虹彩認証は最初に赤外線カメラなどで虹彩をスキャンすることからはじまります。両目をスキャンするものもありますが、ほとんどの場合は片目でスキャンが完了します。そしてスキャンした虹彩に広がっているしわを数字でデータ化します。を虹彩認証では虹彩の色など参考にして認証を行っているわけではないので、夜遅くや日の当たらない暗所でも問題なく虹彩認証を行うことができます。また、虹彩を登録した時と認証をするときの明るさの違いで虹彩の模様が変わってしまい、虹彩認証ができないという点も、虹彩のデータを登録する際にさまざまな明るさの光を当てた画像を複数登録することで問題を回避しています。あらかじめ登録してある虹彩のデータと照らし合わせ、ある程度一致していたら認証されます。鍵などを使う入退室管理に比べると非常に簡単で便利ですが、なかには「ある程度一致で認証する」ことについて防犯性やセキュリティ面で疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、虹彩は同じ人でも毎回多少違うものになるため、ある程度一致したら認証される仕組みになっています。ある程度といっても虹彩の細かな線状の模様は人によって全く違い、虹彩認証は全く違う人であれば数字化したデータも全く異なるものにはなるので、他人を簡単に認証してしまうことはないため防犯性やセキュリティ面での問題はないとされています。

◎虹彩認証の入退室管理

虹彩認証の入退室管理システムはIDカードや鍵に比べていくつもの利点があります。例えばIDカードのカードリーダーを使用する場合、なりすましをされる可能性があり、防犯性やセキュリティ面で不安が残ります。また、IDカードの紛失時には防犯上の問題だけでなく、IDカードの再発行などにコストがかかることになります。鍵の場合もIDカードと同じように鍵の紛失時には防犯性やセキュリティ面での不安に加え、鍵の交換の費用がかかってきます。鍵自体の防犯性は技術が進歩して高まっていますが、鍵の種類によってはピッキングされやすいのが現状です。またテンキーなどの暗証番号管理の場合、暗証番号が流失する可能性があり、同様に防犯性やセキュリティ面で不安が残ります。一方、虹彩認証はそういった鍵などのモノを必要とせず、加えて暗証番号も必要としないため、このような危険性がありません。また、同じような防犯性やセキュリティ面が高い生体認証と比較しても虹彩認証が優秀といえる点がいくつかあります。例えば顔認証はマスクをしていると認証が出来なくなってしまうものがあります。また、静脈認証は精度が非常に高く防犯性やセキュリティ面で優れていますが、手袋などをしてしまうと認証は行えません。それに比べて、虹彩認証はマスクをしていても、手袋をしていても虹彩さえ隠れていなければ虹彩認証が出来るため、マスクや手袋を利用しながら防犯性やセキュリティ面を強化したいという施設で虹彩認証は多く採用されています。

◎虹彩認証の活用事例

虹彩認証の活用事例で多くあげられるのが食品工場です。食品工場は提供される食品に衛生面での問題がないように手袋やマスクを着用して作業する場合がほとんどです。そのため食品工場で他の生体認証を採用しようとしても、マスクで顔の一部が隠れていたり手を手袋で覆っていたりするため難しいことがあり、手袋の種類によっては使用しているときに鍵を利用しにくいこともあります。もちろんマスクや手袋を外してしまえば顔認証や指紋認証も可能にはなりますが、工場内でそれらを外してしまうと衛生面での不安が残ることとなります。ですが虹彩認証は虹彩の部分さえ赤外線カメラでとらえることが出来れば認証することが出来るので、衛生面での問題を抱えることなく、防犯性やセキュリティ面を強化することが出来ます。また、同様の理由でマスクや手袋が仕事をする中で必須な環境の病院でも鍵などに代わる防犯性やセキュリティ面の強化として虹彩認証が採用されることが多いようです。虹彩認証による防犯性の向上、セキュリティ面の強化で他にあげられるものはプールや温泉・スパなどのレジャー施設があります。プールでの現金の持ち運び等は楽しむ際にとても面倒なのに加えて、盗難・紛失の危険性が伴います。また、温泉につかることで指がふやけてしまうと指紋認証を正確に行うというのは難しくなるなど、防犯性を高めることが出来る生体認証は、水温による体調の変化が認証に影響を与えるものがあります。そのような心配を虹彩認証はする必要がないため、利便性を高めつつ防犯性やセキュリティ面を強化することが出来ます。最後の活用事例は建設現場への虹彩認証の採用です。虹彩認証は登録された人以外は当然認証されないため、危険な工事現場への不正入場を防止することができ、防犯性やセキュリティ面を強化できます。モノが多い工事現場では鍵やIDカードのモノをどこかへ忘れることや紛失することが少なくないそうですが、虹彩認証は紛失を防ぐことが出来るため結果として防犯性の向上・セキュリティの強化につながります。工事現場ではモノを運んで移動することが多いため、鍵の利用や指紋認証などでは１回１回モノを置いてから利用・認証をしなければなりません。加えて、危険な作業も少なくないため手袋や眼鏡、ゴーグル・マスク・防止等を装着しなければいけない場面は多々あります。顔や手が隠れてしまうと顔認証や指紋認証を行う際はまた一つ手間が増えてしまいます。その点虹彩認証は虹彩を捉えることが出来れば認証を行うことが出来るため、鍵などに代わって工事現場への採用も多くなっています。温度や従事した仕事等による影響を避けられ、防犯性やセキュリティ面を強化することができるのも鍵に代わって虹彩認証が工事現場に導入される後押しをしているようです。

◎まとめ

鍵などに代わる生体認証の中でも虹彩認証はその特徴から防犯性やセキュリティ面の強化では特に優れているといわれています。鍵やIDカードなどのモノを必要とせず、指紋認証のように何かに触れたりする必要もないため手軽かつ衛生的に認証を行うことができ、防犯性やセキュリティ面だけでなく利便性での評価も高くなっています。防犯性の向上やセキュリティ面の強化に電気錠をすでに利用している方の中には「今から虹彩認証に変更するのは難しそう」と思われる方もいらっしゃると思いますが、当社ではMIWAやGOALの既存の電気錠に追加で虹彩認証を取り付けることも可能です。「鍵や暗証番号による管理よりもより防犯性やセキュリティ面を強化したい」という方だけでなく、「より手軽な入退室管理システムを採用したい」という方にも虹彩認証はおすすめです。ご興味のある方はぜひ虹彩認証についてご相談・ご依頼ください。