認知症による徘徊対策と防犯対策
認知症と徘徊
超高齢社会といわれる現代、認知症を患う方や認知症の介護をされる方が身近に増えていませんか?
認知症の症状のひとつである「徘徊」は、今や社会的問題となっています。
また高齢者を狙った犯罪も増加傾向にあり、高齢者の生活を守る工夫が求められています。
認知症の症状や高齢者を守るための防犯対策をご紹介します。
認知症は誰もが罹りうる病気で、厚生労働省の2015年の発表によると65歳以上の7人に1人が認知症を患っており、2025年には5人に1人が認知症になるとさえいわれています。
認知症の症状には「もの忘れが多くなる」「理解や判断に時間がかかる」「場所や時間が分からなくなる」「計画を立てて物事を行うことが困難になる」等があります。
これは認知症患者に限らず多くの高齢者に共通して起こりうることです。
高齢者を狙った空き巣や詐欺などの事件も増加傾向にある今、認知症の診断の有無によらず防犯対策を考えておく必要があります。
また認知症には、抑うつ・妄想・徘徊など周辺症状(BPSD)といわれるものがあります。
これらは本人の性格や歩んできた人生によって症状の現れ方が異なりますが、なかでも徘徊は「認知症だから仕方ない」では片づけられない問題です。
警察庁によると2019年に全国の警察に届けられた認知症による徘徊からの行方不明者の数は1万7千人にのぼるといわれています。
認知症による徘徊で家に帰れず事故に遭ってしまったり、他人を巻き込む事故を起こすケースもあり家族に大きな負担がかかるため認知症による徘徊は社会的な問題と考えられています。
2007年愛知県で認知症の高齢者が列車にはねられて亡くなった事故がありました。
この事故で列車が遅延したため、鉄道会社は振替え輸送の費用などの損害賠償として約720万円の支払いを遺族に求め提訴しました。
最高裁までもつれ込み、最終的に「家族に賠償責任はない」との判決となり家族は賠償請求を免れましたが、裁判は8年にも及びました。
勝訴したとはいえ遺された家族の精神的な負担は大きかったはずです。
仮に同様の事故で一命をとりとめながらも大怪我や後遺症が残ったとしたら、認知症に加えその後の医療や介護も家族が担うものとなります。
このようなことが起こる可能性を低くするためにも、認知症の徘徊対策は大変重要です。
鍵を使った認知症の防犯対策
認知症の徘徊対策や防犯対策では家族や介護者が気づかないうちに認知症の家族が家の外に出てしまうのを防ぐことが大切です。
徘徊対策としては室内からドアを開かないようにする鍵を使う方法などがあげられます。
認知症を患う方を家に閉じ込めることではなく、認知症の介護をする家族の多くが自分の生活や仕事があるなかで身を削る思いで介護にあたっています。
終わりの見えない認知症の介護に疲弊しすぎないようにサポートするのが鍵の役目です。
介護者の入浴時や就寝時、家事や電話など少し認知症の家族のそばを離れる時やほんのちょっと息抜きしたいときなど鍵を使った徘徊対策が効果的です。
鍵を使った認知症の徘徊対策は防犯対策にもなります。
近年高齢者のひとり暮らしや高齢者のみの世帯が増加傾向にあり高齢者を狙った犯罪も増えているといわれています。
侵入窃盗犯罪がそのひとつで、「空き巣」や夜の就寝中に侵入される「忍び込み」、住人が家にいる間に侵入される「居空き」といった様々な手口があります。
このような犯罪が増加傾向にありますが、昔からの習慣で玄関や窓に鍵をかけずに出けるなど防犯を強く意識しない高齢者もおり、実際に防犯対策をしている家庭はまだまだ少ないのが現状です。
認知症の主な症状が多くの高齢者に共通して現れるように、高齢になるにつれ認知症でなくても脳の働きは変わってきます。
一口に防犯対策や防犯対策の必要性を感じていたとしても、多くの情報の中から適切なものを選んだり、防犯用品の説明書を読み自分で取り付けることに億劫な高齢者は多いかもしれません。
「防犯対策」という言葉を使った特殊詐欺や悪質な訪問販売も起こっているので家族が一緒になって防犯対策を考えることが大切です。
ここで玄関や勝手口の鍵を使った認知症の徘徊対策や防犯対策を三つ紹介します。
一つ目は「玄関錠を着脱式サムターンに交換すること」です。
サムターンとは室内側から鍵を施錠・解錠するときに回すツマミのことで、外側から鍵を差し込んで解錠する鍵タイプのものと、外側から暗証番号をプッシュボタンで押して解錠するデジタルロックのタイプのものがあります。
サムターンを外しておくことは徘徊対策だけでなく、空き巣の手口である「サムターン回し」に対する防犯対策にもなります。
二つ目は「既存のサムターンをセーフティサムターンに交換すること」です。
セーフティサムターンは室内側から在室モード/外出モードに切り替えることができる鍵です。
専用の鍵で外出モードにすると室内からサムターンを回しても空転し解錠できなくなるため、徘徊防止に役立ちます。
サムターンが空転するようにしておけば防犯対策にもなります。
三つ目は「現在使っている鍵はそのままで補助錠を追加で取り付けること」です。着脱式サムターンやデジタルロックを追加で装着することができます。
補助錠をつけていることが外から分かると侵入に時間を要する印象を与えられるため、徘徊対策だけでなく防犯対策にもなります。
玄関がドアタイプか引き戸タイプか、ドアの厚さはどのくらいかなど、ご家庭のドアにより適する商品が異なります。認知症の徘徊対策・防犯対策を万全にするためにも、迷った際はカギ舎株式会社に一度ご相談ください。
また玄関や勝手口の徘徊対策だけでなく窓の防犯対策も有効です。
空き巣は窓から入ってくることが多いとされているので、認知症の徘徊を防ぐだけでなく侵入窃盗の防犯対策として窓の鍵を強化することも重要です。
主に窓の徘徊対策・防犯対策には二つの方法があります。ひとつは「カギ付きクレセント錠に交換すること」です。
アルミサッシなどの窓を内側から施錠する半円形の鍵をクレセント錠といいますが、それを鍵やダイヤルでロックできるものに交換します。
もうひとつは「サッシガード/ファスナーロックを補助錠として使うこと」です。ストッパーとしてサッシに装着し窓のすれ違いを防止します。
万が一クレセント錠を開けられても窓が開かないので窓の上下に装着すると防犯対策に一層効果的です。
カギ付きクレセント錠やサッシガード/ファスナーロックは窓の防犯対策として多くの種類があります。
鍵を使った防犯対策以外にできること
玄関や窓の鍵を使った徘徊対策・防犯対策が時には逆効果になることもあるので気を付けましょう。
とくに認知症の徘徊は不安を解消する行為でもあり、強く抑えようとすると認知症の症状の悪化や無理な外出による事故が起こりかねません。
認知症の方の現在の症状と様々な防犯対策を照らし合わせ、徘徊対策・防犯対策としての鍵の活用は適切に判断しましょう。
鍵を使わない認知症の徘徊対策として、家族や介護者だけで問題を抱えず福祉サービスを積極的に利用するのも手です。
アラームが鳴る徘徊対策の感知器やGPS端末を使って居場所を把握することもできます。
周りの人やITの力を借りて介護者の気持ちに少しゆとりを確保できたら、時間を決めて一緒に散歩や買い物に出かけたり、話を聞く機会が増えるとよいですね。
ご近所の方に協力してもらうことは、徘徊対策としてだけでなく防犯対策としても重要です。
空き巣の犯人は事前に下見に来るといわれます。不審者があらわれたとき、近隣の方に挨拶程度でも声をかけられれば諦める可能性が高くなります。
それ以外にも窓の防犯対策に防犯フィルムを使う、窓や玄関に死角をつくらないようにするなどの防犯対策もあります。
認知症の防犯対策や徘徊対策だけでなく、健康面に心配がある場合は、警備会社などによる見守りサービスを使う方法もあります。
そして、徘徊対策としても防犯対策としても大切なのはコミュニケーションを密にとることです。
認知症を患う方と離れて住んでいても電話や訪問などで言葉を交わしていると小さな変化に気づくことができ、高齢者の孤独感を悪用した詐欺に巻き込まれる可能性を下げることもできます。
信頼できる相手との会話は今すぐ始められる大きな防犯対策です。
まとめ
認知症患者の増加や、高齢者のひとり暮らしや高齢者だけの世帯を狙った犯罪の増加は社会的な問題となっています。
認知症は誰もがかかりうる病気であり、誰もがいずれは高齢者となります。皆が当事者になる可能性があるからこそ、地域で協力しあい高齢者の暮らしを守る徘徊対策・防犯対策を考えていきましょう。
その方法の一つとして鍵による徘徊対策・防犯対策を紹介しました。徘徊対策・防犯対策にお困りの際は老人ホームや養護施設などの施工も手掛けるカギ舎株式会社にご相談ください。